
イタリアのように旅行産業(航空会社、ホテル、美術館、寺院、お土産店など)の収入によって経済が支えられてる国では、来訪する外国人者の安全を保障することが義務であるとの考えから、外国人旅行者の救急外来の医療費を無料(入院と手術は除く)にしています。
イタリアを旅行中に大きな怪我や心筋梗塞や脳卒中などの発作が出た場合には、救急車を呼ぶ必要がありますが、イタリアでは救急車は「118(全国統一番号)」で呼びます。
救急車システムは日本と同様に全国に張り巡らされていますが、道路の代わりに運河が主な交通路となっているベネツィアでは、スピードボートの救急船が派遣されます。またスイスやオーストリアとの国境にある山岳地帯だと救急搬送用のヘリコプターも出動します。
救急車の到着時間は7〜8分ですが、道路事情の悪いローマなどではこれ以上に時間がかかることもあります。この問題を解決するため、イタリアでは救急車を消防署に常時待機させるのではなく、呼ばれる頻度の高そうな地域の路上に予め救急車を配備しておくシステムがとられています。
また、医師や看護師、救急隊員を救急車とは別にバイクや小型乗用車で派遣し、病院に搬送する前に現場で初期治療を行い、時間的なロスを防ぐという工夫もなされています。これは一分一秒が予後を大きく左右する心筋梗塞や脳卒中の救命率を上げる試みとして高く評価されています。
イタリアで118番のコールをした際には、原則、イタリア語で自身、あるいは患者の容態を詳しく伝える必要があります。したがって、現地のガイドや通訳、ホテルの人たちに通訳を頼むケースが多くなりますが、心筋梗塞や脳卒中が疑われる場合には、その旨をはっきりと伝えることが大切です。
日本の119番は、全ての要請に対して同じように即座に救急車が派遣されますが、イタリアの118番ではトリアージが導入されています。すなわち、患者が重症と判断された場合には、医師が救急車に同乗して直ぐに派遣されますが、軽症と判断されると救急隊員のみで、救急車が来るのも他の優先患者の搬送が終わってからになります。
トリアージは救急室に到着してからも行われます。これはアメリカのER(Emergency Room)とほぼ同じですが、日本人はトリアージ自体になじみがないため、軽症で待たされると人種差別ではないかと誤解する方も少なくないようです。トリアージは看護師が患者の状態を赤(重症)、黄色(準重症)、緑(中等症)、白(軽症)の4レベルにわけ、重症はそのまま手術室や処置室へ、軽症は1時間くらい待たされます。